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【国家総合職・外務専門職】憲法:特別な法律関係と人権

国際法ばかり、掘っていたので次、憲法に行きます。

問い

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律50号)70条1項は、刑事施設の長は、未決拘禁者が「自弁の書籍等を閲覧することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、その閲覧を禁止することができる」と規定し、1号で「刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるとき」と、3号で「罪証の隠滅の結果を生ずるおそれがあるとき」と、規定している。

 この法律規定は憲法上どのように評価できるかについて、述べなさい。

 論点のながれ)

(1) 特別権力関係論の定義&現憲法での限定適用

(2) 未決拘禁者の「閲覧の自由」と「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の合憲性確認

 1)憲法19条、21条の趣旨との兼ね合い

  第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

     第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

             2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 2)憲法13条の趣旨との兼ね合い

    第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

(3)判例よど号」新聞記事抹消事件(最大判昭和45年9月16日)

(4)結論:「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」70条1項1号および3号の合憲である。

 

※ 裁判所HPより引用 : 判例よど号」新聞記事抹消事件(最大判昭和45年9月16日)

      事件番号  昭和52(オ)927               事件名  損害賠償

      裁判年月日  昭和58年6月22日

      法廷名  最高裁判所大法廷             裁判種別  判決

      結果  棄却                                        判例集等巻・号・頁  民集 第37巻5号793頁

     原審裁判所名  東京高等裁判所    原審事件番号  昭和50(ネ)2782

     原審裁判年月日  昭和52年5月30日

判示事項

 一 未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合における監獄法三一条二項、監獄法施行規則八六条一項の各規定と憲法一三条、一九条、
二 一条二拘置所長が未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事を抹消する措置をとつたことに違法はないとされた事例

裁判要旨  

一 監獄法三条二項、監獄法施行規則八六条一項の各規定は、未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合においては、具体的事情のもとにおいて当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められるときに限り、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ閲読の自由の制限を許す旨を定めたものとして、憲法一三条、一九条、二一条に違反しない。
二 いわゆる公安事件関係の被拘禁者らによる拘置所内の規律及び秩序に対するかなり激しい侵害行為が当時相当頻繁に行われていたなど原判示の事情のもとにおいては、公安事件関係の被告人として未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事中いわゆる赤軍派学生によつて行われた航空機乗取り事件に関する部分について、拘置所長が原判示の期間その全部を抹消する措置をとつたことに違法があるとはいえない。

参照法条

監獄法31条2項,監獄法施行規則86条1項,憲法13条,憲法19条,憲法21条,

国家賠償法1条1項

 

 Wikipedia 引用

特別権力関係論

 特別権力関係論(とくべつけんりょくかんけいろん)とは、公法学上の概念であり、ある一定の特別の公法上の原因によって成立する公権力と国民との法律関係における法理についての理論。なお、統治権によって成立する人と公権力との関係は「一般権力関係」と呼び区別される。

理論の意義
ドイツ発祥の概念で、大日本帝国憲法下の日本でも用いられた理論である。特別権力関係 ( 独:besonderes Gewaltverhältnis ) においては、以下で述べるような特別の法理によって律せられると考えられてきたが、日本国憲法など、現行の「法の支配」(法治主義)を旨とする憲法法制下ではそのままの形では採用できないと考えられている。
「特別権力関係」とみなされる法律関係の具体的な例としては公務員の勤務関係、在監者(受刑者、未決拘禁者)の在監関係、国公立大学の学生の在学関係、国公立病院の患者の在院関係などが挙げられるが、これらの法律関係の発生は公権力の強制が契機の場合もあれば、本人の同意が前提となる場合もあり、そもそも一律な法理を当てはめることが妥当かどうか、この法理そのものの意義について疑問視する見方もある。
芦部信喜は、従来特別権力関係と呼ばれていた法律関係のうち、憲法秩序の構成要素としてその存在と自律性が認められたものについてのみは特別の規律に基づく人権制限が許されるのではないかという見解を述べたことがある(憲法秩序構成要素説)。
法原則
特別権力関係において伝統的に妥当すると考えられてきた法原則は以下の通りである。
法治主義の排除
公権力は包括的な支配権(命令権、懲戒権)を有し、法律の根拠なくして私人を包括的に支配できる。
人権保障の排除
公権力は私人の人権を法律の根拠なくして制限することができる。
司法審査の排除
公権力の行為の適法性について、原則として司法審査に服さない。

憲法での修正
日本国憲法など立憲的な憲法においては法の支配(法治主義)や基本的人権の尊重を原理原則としていることから各種の修正がなされている。以下は日本の事例により説明する。
公務員
全逓東京中郵事件[1]において、「公務員にも労働基本権が保障されるが、内在的に制約を受ける」として、一応、特別権力関係を修正した。
在監者
拘置所の新聞記事の一部を抹消した「よど号」記事抹消事件において「相当の蓋然性」がある限り、認められれば許容されるとしている[2]。
国立大学学生
例えば、富山大学事件では特別権力関係論を採用せずに部分社会論を採用しているといわれる。それに類する事件として私立大学の事件だが昭和女子大事件などがある。
ハンセン病療養所療養患者・元患者
詳細は「日本のハンセン病問題#患者懲戒検束権」を参照
かつて、ハンセン病療養所の医師や看護人他療養所職員と療養患者・元患者との間に、前者の後者に対する「懲戒検束権」が認められていたとする関係者の証言が多く存在し、これをもって、療養所内もしくは内外で両者の間に特別権力関係が成立していたともされているが、それが国や自治体他の官公署で認められていた事項だったか否かはその責任の所在もふくめ現在でも学術研究上の対立がある。

近時、最高裁は「特別権力関係」の語を用いなくなったが、単純な内部的規律の範囲を超えてされる退学などの措置については司法審査が及ぶとする修正特別権力関係説に対応する形で、地方議会や大学のような「特殊な部分社会」の内部問題は、一般市民法秩序と直接の関係を有する場合を除き、違法審査の対象外とする部分社会論を展開している(富山大学事件)。

【国家総合職・外務専門職】国際法:みなみまぐろ事件

 1958年から三次にわたり国際連合海洋法会議が開催され、第三次国連海洋法会議は,1973年に開始され,10年間にわたる交渉の末,1982年,ジャマイカにおいて開催された第三次国連海洋法会議最終議定書及び条約の署名会議において条約が採択され,1984年までの署名開放期間中に159ヶ国が署名(日本は1983年2月に署名),1994年11月に発効しました。(日本は1996年7月に発効)これだけの期間を要したのは、日本を含めた先進国の対応です。「人類の共同の財産」という総論は、賛成しても 各論ではやはり先進国それぞれの思惑や国益があります。そのような中1998年と1999年の日本のみなみまぐろの漁獲量をめぐり、豪州とニュージランドから日本が 国連海洋法条約第64条等に違反するとのことで国際海洋法裁判所に対し,仲裁 並びに 調査漁獲の即時中止等の暫定措置を要請した。その結果として国際海洋法裁判所は、これを一時受理した。しかし 2000年になって、この問題を審理していた国際海洋法裁判所の仲裁裁判所は、この問題は審理の管轄外であり以前の暫定措置命令は無効とする判断を下して日本が逆転勝訴している。

今回の「国連海洋法に基づく紛争解決手続の特徴と限界について論じなさい」という問いに対して、

(1)国連海洋法の定義

(2)国連海洋法に基づく紛争解決手続の特徴

 1)国連海洋法条約  286条   付託

第2節 拘束力を有する決定を伴う義務的手続

第286条  この節の規定に基づく手続の適用

第3節の規定に従うことを条件として、この条約の解釈又は適用に関する紛争であって第1節に定める方法によって解決が得られなかったものは、いずれかの紛争当事者の要請により、この節の規定に基づいて管轄権を有する裁判所に付託される。

 2)国連海洋法条約  287条1項   付託される裁判所

    → 国際海洋裁判所、国際司法裁判所、仲裁裁判所、特別仲裁裁判所です。 

 3)国連海洋法条約 287条4項  選択が一致した場合の裁判所

 4国連海洋法条約 287条5項  選択が一致しない場合の裁判所

 第287条  手続の選択

1 いずれの国も、この条約に署名し、これを批准し若しくはこれに加入する時に又はその後いつでも、書面による宣言を行うことにより、この条約の解釈又は適用に関する紛争の解決のための次の手段のうち一又は二以上の手段を自由に選択することができる。
a 附属書VIによって設立される国際海洋法裁判所
b 国際司法裁判所
c 附属書VIIによって組織される仲裁裁判所
d 附属書VIIIに規定する一又は二以上の種類の紛争のために同附属書によって組織される特別仲裁裁判所

4 紛争当事者が紛争の解決のために同一の手続を受け入れている場合には、当該紛争については、紛争当事者が別段の合意をしない限り、当該手続にのみ付することができる。

5 紛争当事者が紛争の解決のために同一の手続を受け入れていない場合には、当該紛争については、紛争当事者が別段の合意をしない限り、附属書VIIに従って仲裁にのみ付することができる。

  5)国連海洋法条約290条5項・第292条1項 迅速な審理の求められる暫定措置と速やかな釈放についての国際海洋法裁判所の管轄権

第290条  暫定措置

 5 この節の規定に従って紛争の付託される仲裁裁判所が構成されるまでの間、紛争当事者が合意する裁判所又は暫定措置に対する要請が行われた日から2週間以内に紛争当事者が合意しない場合には国際海洋法裁判所若しくは深海底における活動に関しては海底紛争裁判部は、構成される仲裁裁判所が紛争について管轄権を有すると推定し、かつ、事態の緊急性により必要と認める場合には、この条の規定に基づき暫定措置を定め、修正し又は取り消すことかできる。紛争が付託された仲裁裁判所か構成された後は、当該仲裁裁判所は、1から4までの規定に従い暫定措置を修正し、取り消し又は維持することができる。

 第292条  船舶及び乗組員の速やかな釈放

1 締約国の当局が他の締約国を旗国とする船舶を抑留した場合において、合理的な保証金の支払又は合理的な他の金銭上の保証の堤供の後に船舶及びその条組員を速やかに釈放するというこの条約の規定を抑留した国が遵守しなかったと主張されているときは、釈放の問題については、紛争当事者が合意する裁判所に付託することができる。抑留の時から10日以内に紛争当事者が合意しない場合には、釈放の問題については、紛争当事者が別段の合意をしない限り、抑留した国が第287条の規定によって受け入れている裁判所又は国際海洋法裁判所に付託することができる。

 (3)国連海洋法条約の規定によって適用されない場合(紛争解決手続きの限界)

  1)国連海洋法条約297条2項3項(そもそも義務的手続にならない自動的除外事項)・第298条1項(義務的な手続の対象外にできる選択的除外事項)

第3節 第2節の規定の適用に係る制限及び除外

第297条  第2節の規定の適用の制限(そもそも義務的手続にならない自動的除外事項)

 2  この条約の解釈又は適用に関する紛争であって、海洋の科学的調査に係るものについては、第2節の規定に従って解決する。ただし、沿岸国は、次の事項から生ずるいかなる紛争についても、同節の規定による解決のための手続に付することを受け入れる義務を負うものではない。
 a 第246条の規定に基づく沿岸国の権利又は裁量の行使
 b 第253条の規定に基づく海洋の科学的調査の活動の停止又は終了を命ずる沿岸国の決定
 c 海洋の科学的調査に係る特定の計画に関し沿岸国がこの条約に合致する方法で第246条又は第253条の規定に基づく権利を行使していないと調査を実施する国が主張することによって生ずる紛争は、いずれかの紛争当事者の要請により、附属書V第2節に定める調停に付される。ただし、調停委員会は、第246条6に規定する特定の区域を指定する沿岸国の裁量の行使又は同条5の規定に基づいて同意を与えない沿岸国の裁量の行使については取り扱わない。
 3  この条約の解釈又は適用に関する紛争であって、漁獲に係るものについては、第2節の規定に従って解決する。ただし、沿岸国は、排他的経済水域における生物資源に関する自国の主権的権利(漁獲可能量、漁獲能力及び他の国に対する余剰分の割当てを決定するための裁量権並びに保有及び管理に関する自国の法令に定める条件を決定するための裁量権を含む。)又はその行使に係るいかなる紛争についても、同節の規定による解決のための手続に付することを受け入れる義務を負うものではない。
 a 第1節の規定によって解決が得られなかった場合において、次のことが主張されているときは、紛争は、いずれかの紛争当事者の要請により、附属書V第2節に定める調停に付される。
 b 沿岸国が、自国の排他的経済水域における生物資源の維持が著しく脅かされないことを適当な保存措置及び管理措置を通じて確保する義務を明らかに遵守しなかつたこと。
 c 沿岸国が、他の国が漁獲を行うことに関心を有する資源について、当該他の国の要請にもかかわらず、漁獲可能量及び生物資源についての自画の漁獲能力を決定することを恣意的に拒否したこと。
 d 沿岸国が、自国が存在すると宣言した余剰分の全部又は一部を、第62条、第69条及び第70条の規定により、かつ、この条約に適合する条件であって自国が定めるものに従って、他の国に割り当てることを恣意的に拒否したこと。
 e 調停委員会は、いかなる場合にも、調停委員会の裁量を沿岸国の裁量に代わるものとしない。
 f 調停委員会の報告については、適当な国際機関に送付する。
 g 第69条及び第70条の規定によっ協定を交渉するに当たって、締約国は、別段の合意をしない限り、当該協定の解釈又は適用に係る意見の相違の可能性を最小にするために当該締約国がとる措置に関する条項及び当該措置にもかかわらず意見の相違が生じた場合に当該締約国がとるべき手続に関する条項を当該協定に含める。

 第298条1項(義務的な手続の対象外にできる選択的除外事項)

第298条  第2節の規定の適用からの選択的除外

 1   第1節の規定に従って生ずる義務に影響を及ぼすことなく、いずれの国も、この条約に署名し、これを枇准し若しくはこれに加入する時に又はその後いつでも、次の種類の紛争のうち一又は二以上の紛争について、第2節に定める手続のうち一又は二以上の手続を受け入れないことを書面によって宣言することができる。
 a 海洋の境界画定に関する第15条、第74条及び第83条の規定の解釈若しくは適用に関する紛争又は歴史的湾若しくは歴史的権限に関する紛争。ただし、宣言を行った国は、このような紛争がこの条約の効力発生の後に生じ、かつ、紛争当事者間の交渉によって合理的な期間内に合意が得られない場合には、いずれかの紛争当事者の要請により、この問題を附属書V第2節に定める調停に付することを受け入れる。もっとも、大陸又は島の領土に対する主権その他の権利に関する未解決の紛争についての検討が必要となる紛争については、当該調停に付さない。
 b 調停委員会が報告(その基礎となる理由を付したもの)を提出した後、紛争当事者は、当該報告に基づき合意の達成のために交渉する。交渉によって合意に達しない場合には、紛争当事者は、別段の合意をしない限り、この問題を第2節に定める手続のうちいずれかの手続に相互の同意によって付する。
 c この(a)の規定は、海洋の境界に係る紛争であって、紛争当事者間の取決めによって最終的に解決されているもの又は紛争当事者を拘束する2国間若しくは多数国間の協定によって解決することとされているものについては、適用しない。
 d 軍事的活動(非商業的役務に従事する政府の船舶及び航空機による軍事的活動を含む。)に関する紛争並びに法の執行活動であつて前条の2及び3の規定により裁判所の管轄権の範囲から除外される主権的権利又は管轄権の行使に係るものに関する紛争
 e 国際連合安全保障理事会国際連合憲章によって与えられた任務を紛争について遂行している場合の当該紛争。ただし、同理事会が、当該紛争をその審議事項としないことを決定する場合又は紛争当事者に対し当該紛争をこの条約に定める手段によつて解決するよう要請する場合は、この限りでない。

 

 2)国連海洋法条約 281条1項(紛争当事者によって解決が得られない場合の手続)→みなみまぐろ事件において仲裁裁判所は、みなみまぐろ保存条約の規定が一方的な付託に基づく裁判を排除しているとして、事件の管轄権を否定した。 

第281条  紛争当事者によって解決が得られない場合の手続

 1   この条約の解釈又は適用に関する紛争の当事者である締約国が、当該締約国が選択する平和的手段によって紛争の解決を求めることについて合意した場合には、この部に定める手続は、当該平和的手段によって解決が得られず、かつ、当該紛争の当事者間の合意が他の手続の可能性を排除していないときに限り適用される。

(3)結論

 国連海洋法条約の紛争解決手続の意義と限界については義務的な手続をめぐる議論が中心となる。その大前提として、国連海洋法条約が締結国に対して紛争の平和的解決を義務づけていることを忘れてはならない。(第279条)

第15部 紛争の解決

第1節 総則

第279条  平和的手段によって紛争を解決する義務

 締約国は、国際連合憲章第2条3の規定に従いこの条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争を平和的手段によって解決するものとし、このため、同憲章第33条1に規定する手段によつて解決を求める。

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Wikipedia引用  みなみまぐろ

 漁獲の結果として50年余りで92%もの個体数減少が起こったとされている。IUCNのレッドリストでは、1994年に"CR"(Critically endangered)、マグロ類のみならず野生動物としても最も絶滅が危惧されている動物の一つとして記載された。このまま漁獲を続けると、100年以内に個体数が500匹を下回るともいわれる。
1994年には主要な漁業国だった日本・オーストラリア・ニュージーランド三国によって「みなみまぐろ保存委員会」(CCSBT - Commission for the Conservation of Southern Bluefin Tuna : 本部キャンベラ)が設置され、資源管理への取り組みが本格化した。その後韓国、フィリピン、南アフリカ、EUなども加盟国、または協力的非加盟国としてCCSBTに参加を表明した。
しかし割り当てられた漁獲量以上の漁獲が発覚(日本、1996年-2005年までに約10万トン前後[3])したり、日本とオーストラリア・ニュージーランド国際海洋法裁判所で対立したり(みなみまぐろ事件[4])、非加盟国による漁獲も続いたりと、課題は多い。

 

Wikipedia引用  みなみまぐろ事件について

1998年と1999年に日本が豪などとの合意が得られない状況で実施した調査漁獲について、オーストラリアとニュージーランド国連海洋法条約等に違反するとして訴えた事件。調査漁獲は慎むべきとする暫定措置命令が日本に下った。しかし2000年、この問題を審理していた国際海洋法裁判所の仲裁裁判所は、この問題は審理の管轄外であり以前の暫定措置命令は無効とする判断を下して日本が逆転勝訴している。(外務省_国際海洋法裁判所

 

外務省HP引用

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国際海洋法裁判所(ITLOS:International Tribunal for the Law of the Sea)

平成27年7月27日
1 裁判所の概要

(1)組織

 国連海洋法条約に基づき,同条約の解釈・適用に関する紛争の司法的解決を任務として,1996年に設立された。所在地は,ドイツ・ハンブルク。現在の裁判所所長はロシアのゴリツィン裁判官(裁判所長としての任期は2014年10月1日~2017年9月30日)であり,書記局(職員数:37名)が裁判官を補佐し,裁判関連事務等を行っている。

(2)裁判官

ア 国際海洋法裁判所は,公平であり及び誠実であることについて最高水準の評価を得ており,かつ,海洋法の分野において有能の名のある者のうちから選挙される全21名の独立の裁判官の一団で構成される(国際海洋法裁判所規程第2条1)。
イ 裁判官の任期は9年であり,国連海洋法条約締約国会議において,3年に一度改選選挙を実施(同規程第4条及び第5条)。なお,2014年6月のITLOS裁判官選挙において,柳井裁判官は再選された(任期:2014年10月1日から9年間)。
柳井俊二国際海洋法裁判所(ITLOS)裁判官の再選に関する岸田外務大臣祝辞の発出(平成26年6月27日)
国際海洋法裁判所(ITLOS)裁判官選柳井俊二ITLOS裁判官の再選について(外務大臣談話)(平成26年6月12日)
ウ 裁判官の構成(2014年10月1日現在)。
(3)主要会議

ア 国連海洋法条約締約国会議(年1回開催。於:ニューヨーク)
 裁判所の行財政事項(予算を含む)等について協議し,また,裁判官の改選選挙(3年に1回)を実施している。なお,第24回締約国会議は,2014年6月9日~13日に開催(同会議において,第7回裁判官選挙が実施された。)。
イ 裁判官会合(年2回,3月及び9月頃開催。於:ハンブルク。)
 裁判所の組織に関連する事項等を定期的に協議する場として,年2回開催されている。
2 裁判所の権限

(1)当事者能力

 裁判所は,国連海洋法条約の締約国に開放されているほか(国際海洋法裁判所規程第20条1),同条約第11部(深海底)に明示的に規定する事件について又は裁判所に管轄権を与える他の取決めに従って付託され,かつ,裁判所が管轄権を有することを事件の全ての当事者が受け入れている事件について,締約国以外の主体に開放されている(同規程第20条2)。

(2)管轄権の範囲

 裁判所は,国連海洋法条約の解釈又は適用に関する紛争であって,同条約第15部(紛争の解決)の規定に従って付託されるものについて管轄権を有する(同条約第288条1)。また,同条約の目的に関係のある国際協定の解釈又は適用に関する紛争であって当該協定に従って付託されるものについて管轄権を有する(同条約第288条2)。

(3)付託事件

 これまでに23件の事案が付託され,そのうち,12件の判決と8件の暫定措置命令,2件の勧告的意見が下されている。

3 我が国との関係

(1)財政面での貢献

 我が国が分担金の最大拠出国(米国は国連海洋法条約を未締結。)であり,2014年予算における我が国分担額は約154万ユーロ(約1.97億円)となる。これは全体予算の約14.6%を占める額である。

(2)我が国が当事者となった事件

ア みなみまぐろ事件(1999年)
 「みなみまぐろの保存のための条約」により設置された「みなみまぐろ保存委員会」において調査漁獲計画の導入に合意が得られない状況で我が国が調査漁獲を実施したことにつき,豪州及びニュージーランド国連海洋法条約第64条等に違反するとして,1999年8月,国連海洋法条約に基づく仲裁手続を開始した。同時に両国は国際海洋法裁判所に対し,調査漁獲の即時中止等の暫定措置を要請した。国際海洋法裁判所は,当事国は合意がなされるか又は国別割当て量の範囲内でない限り調査漁獲を慎むべき等の暫定措置命令を下した。(ただし,その後の2000年8月,仲裁裁判所は,「みなみまぐろの保存のための条約」は国連海洋法条約に規定する紛争解決手続の可能性を排除しているため,国連海洋法条約に基づき設置された仲裁裁判所は本件紛争の本案を審理する管轄権を有さないこと及び国際海洋法裁判所が発出した暫定措置命令を無効とする旨の判断を下した。)
イ 第88豊進丸事件,第53富丸事件(いずれも2007年)
 カムチャッカ半島沖のロシア200海里水域で,ロシア当局により,2007年6月初めに拿捕された「第88豊進丸」の乗組員及び船体,並びに,2006年11月初めに拿捕された「第53富丸」の船体が釈放されていなかった。このため,我が国として,ロシアによる国連海洋法条約上の義務の履行を求めて(注),2007年7月,これら事案を国際海洋法裁判所に付託した。これに対し国際海洋法裁判所は,「第88豊進丸」については,合理的な保証金の額として1000万ルーブル(約4600万円:ロシア当初提示額の4割)を認定するとともに,ロシアに対し,その支払いにより船体を早期に釈放すること,並びに,船長及び乗組員の無条件での帰国を認めることを命じる判決を下した。また,「第53富丸」については,口頭弁論後にロシアの国内裁判手続が終了し船体没収が確定したため,もはや日本側の請求の目的が失われたとして,「早期釈放」の請求について決定を行えないと判示した。
 (注)国連海洋法条約は,排他的経済水域において拿捕された船舶及び乗組員を「合理的な保証金の支払い」により「速やかに釈放する義務」を定めている(第73条2)。

(3)裁判官の輩出

 これまで,山本草二裁判官(任期:1996年10月1日から9年間)及び柳井俊二裁判官(任期:2005年10月1日から2期18年間)の2名の日本人裁判官が選出されている。なお,柳井裁判官は,2011年10月から3年間,裁判所所長を務めた。

柳井俊二国際海洋法裁判所(ITLOS)判事の裁判所長就任について(平成23年10月2日)
(4)吉良外務副大臣による裁判所訪問

 2012年11月,吉良州司外務副大臣(当時)は,我が国政務レベルとして初めて裁判所を訪問し,柳井俊二所長と会談した。

吉良外務副大臣と柳井国際海洋法裁判所所長との会談(報道発表)(平成24年11月9日)
(5)柳井所長による岸田外務大臣表敬

 2014年7月,岸田文雄外務大臣は,外務省にて,柳井所長による表敬を受けた。柳井所長から,2014年6月の裁判官選挙で再選されたこと及び裁判所の最近の活動について報告が行われた。岸田大臣からは,柳井所長の再選に祝意を表するとともに,我が国として,海洋に関する紛争の平和的解決と,海洋分野における法秩序の維持と発展のために,裁判所が果たす役割を高く評価しており,引き続き裁判所への協力を通じ,海洋における「法の支配」の推進に貢献していく旨述べた。
 なお,これまでに柳井所長は,所長就任前の2011年1月に裁判所裁判官として前原誠司外務大臣(当時)を表敬し,所長就任後の同年11月に玄葉光一郎外務大臣(当時)を表敬している。

 

国際海洋法裁判所に付託された事案一覧  2015年7月27日現在

1  サイガ号事件(早期釈放事案)(事案番号1)
セントビンセント及びグレナディーン諸島対ギニア)
   1997年11月13日 付託    1997年12月4日 判決

2  サイガ号事件(暫定措置)(事案番号2)
セントビンセント及びグレナディーン諸島対ギニア)
  1998年1月13日 要請       1998年3月11日 暫定措置命令

3 サイガ号事件(本案)(事案番号2)
セントビンセント及びグレナディーン諸島対ギニア)
   1997年12月22日 付託    1999年7月1日 判決

4 みなみまぐろ事件(暫定措置)(事案番号3及び4)
  (ニュージーランド対日本,豪州対日本)
   1999年7月30日 要請      1999年8月27日 暫定措置命令

5 カモウコ号事件(早期釈放事案)(事案番号5)
 (パナマ対仏)
    2000年1月17日 付託    2000年2月7日 判決

6 モンテ・コンフルコ号事件(早期釈放事案)(事案番号6)
セイシェル対仏)
   2000年11月27日 付託   2000年12月18日 判決

7 南東太平洋めかじき資源保存事件(本案)(事案番号7)
(チリ対EC)
   2000年12月20日  特別裁判部設置命令
   2001年3月15日    先決的抗弁の期限延長の命令
   2003年12月16日 先決的抗弁の期限再延長の命令
   2005年12月29日 先決的抗弁の期限再々延長の命令
   2009年12月16日 両当事者の合意により取り下げ

8 グランド・プリンス号事件(早期釈放事案)(事案番号8)
ベリーズ対仏)
    2001年3月21日 付託   2001年4月20日 判決

9 チャイシリ・リーファー2号事件(早期釈放事案)(事案番号9)
パナマ対イエメン)
    2001年7月3日 付託   2001年7月12日 両当事者の合意により取り下げ

10 MOX製造工場事件(暫定措置)(事案番号10)
   (アイルランド対英)
      2001年11月9日 要請 2001年12月3日 暫定措置命令

11  ヴォルガ号事件(早期釈放事案)(事案番号11)
   (ロシア対豪州)
      2002年12月2日 付託   2002年12月23日 判決

12 ジョホール海峡事件(暫定措置)(事案番号12)
   (マレーシア対シンガポール
      2003年9月5日 要請  2003年10月8日 暫定措置命令

13 ジュノー・トレイダー号事件(早期釈放事案)(事案番号13)
   (セントビンセント及びグレナディーン諸島ギニアビサウ
     2004年11月18日 付託  2004年12月18日 判決

14 豊進丸事件(早期釈放事案)(事案番号14)
   (日本対ロシア)
      2007年7月6日 付託  2007年8月6日 判決

15 富丸事件(早期釈放事案)(事案番号15)
     (日本対ロシア)
     2007年7月6日 付託  2007年8月6日 判決

16 バングラデシュ・ミャンマー間海洋境界画定に関する紛争(本案)(事案番号16)
      2009年12月14日 付託 2012年3月14日 判決

17 深海底における探査活動を行う個人及び団体を保証する国家の責任及び義務(国際海      底機構による勧告的意見の要請)(事案番号17)
     2010年5月14日 要請 2011年2月1日 勧告的意見発出

18 ルイザ号事件(暫定措置及び本案)(事案番号18)
      2010年11月24日 暫定措置要請及び本案付託
      2010年12月23日 暫定措置却下命令
      2013年5月28日   判決

19 ヴァージニアG号事件(本案)(事案番号19)
   (パナマギニアビサウ
      2011年7月4日 付託  2014年4月14日 判決

20 ARAリベルタッド号事件(暫定措置)(事案番号20)
  (アルゼンチン対ガーナ)
     2012年11月14日 要請  2012年12月15日 暫定措置命令

21 準地域漁業委員会による勧告的意見の要請(事案番号21)
      2013年3月28日 要請 2015年4月2日 勧告的意見発出

22 アークティック・サンライズ号事件(暫定措置)(事案番号22)
   (オランダ対ロシア)
     2013年10月21日 要請  2013年11月23日 暫定措置命令

23 ガーナ及びコートジボワール間の海洋境界画定事件(暫定措置及び本案)(事案番号23)
   (ガーナ対コートジボワール
     2014年12月3日 本案付託  2015年2月27日 暫定措置要請
     2015年4月25日 暫定措置命令(本案係属中)

24エンリカ・レクシー号事件(暫定措置)(事案番号24)
  (イタリア対インド)
     2015年7月21日 要請(係属中)

以上